小学校低学年の塾選び

はじめに

 小学校低学年を小1・小2と限定します。
塾で小1~小6まで授業を受け持っていたのですが、小1と小2は他の学年と一緒に考えてはいけないと、塾講師の経験から感じていました。

 教育というのはeducationの日本語訳です。教育を縦書きすると「育てる」が土台になって「教える」が積み重ねられています。「教育」とは正にそのような仕組みになっています。とてもよくできた日本語訳だと感心します。

 アメリカの幼児教育学会の統一見解では、「育てる」が主である幼児期は8歳までと言われています。つまり「教える」のは9歳からが適切なのです。

 塾講師の勘で、小1・小2は勉強を好きにさせるための学年、小3からは勉強を教える学年という風に決めていましたが、科学的な判断と、それほど食い違ってはいなかったようです。

 つまり、小1と小2は「教える」のではなく「育てる」必要があるということです。
 しかし、小学校低学年から入塾をお考えの保護者は「前倒しの勉強」「難しい問題へのトライ」のような「学校以上に教えてほしい」ということを、進学塾に期待しているケースが多いような気がします。

 「教えること」を進学塾に希望している保護者は、実はそれが正しいという自信があるわけではないのです。そこで、不安を抱えながら、塾の門をたたきます。
 その不安は「こんなに低学年から塾に通わせて、弊害はないだろうか。」ということです・・・。

 心配は、ごもっともです。早期教育の弊害を訴える教育評論家の意見、実際に早期教育をわが子に受けさせ失敗した保護者の経験談など、いやでも目に留まります。
 そこで、子どもには特別な教育を受けさせたい気持ちと、失敗した時の恐怖で引き裂かれそうになっているのです。この記事では、そのような保護者の気持ちに応えていくつもりです。

 さて、「前倒しの勉強」や「難問へのトライ」を小1・小2で実施している塾へ行くのなら、正直言って「弊害がある」可能性が高いと思います。もし「育てる」土台が脆かった場合、その上に重い「教える」を重ねてしまうので、地盤沈下・液状化を起こしてしまうのです。

 小学校低学年ではやらなければならないことが他にあります。私は、進学塾の塾講師だったので、中学受験のための準備を、早目早目に準備をしておこうと考える保護者の気持ちは、分かるつもりですが、やはり早めてよい限界があると思います。

 受験塾では、早期教育の弊害が出ている子どもが、一部に見られます。勉強は楽しくないと思っている子、点数にこだわる子、暗記が勉強だと思っている子・・・挙げればきりがありません。このような子を見ると、少なからず心が痛みます。

 実は、私の書いた「子どもをダメにする親」という記事で、どのような育てられ方をすると、どのような子どもになるかの深堀りをしています。
 本題に入る前に、その復習をしつつ、極端な育てられ方をした「近頃の子ども」の様子をご説明します。

極端な親子間の距離と子どもへの影響

親との距離が近すぎる場合

■ 具体的な親の行動
〇何歳になっても面倒を見ようとする
〇世話を焼き過ぎる
〇全部親がやってしまう
〇親が手をだし子どもの失敗を防ぐ
〇心配し過ぎる
〇プライバシーを無視する
〇勝手に学習計画を立てる
〇子どもを自分の所有物だと思っている
  ⇒ 過干渉・過保護な親(モンスターペアレント・ヘリコプターペアレント)

▲ 子どもへの影響
〇自己否定感
〇問題行動のリスク
〇うつの割合が高い
〇自主性と能力の発達を阻害する
〇喪失や失敗、さらに失望に対処できない
〇決断できない
〇「完璧な自分」 しか認められない
〇自分を好きになれない

親との距離が遠すぎる場合(ネグレクト)

■ 具体的な親の行動
〇家に閉じこめる(子どもの意思に反して学校等に登校させない)
〇重大な病気になっても病院に連れて行かない
〇乳幼児を家に残したまま度々外出する
〇乳幼児を車の中に放置するなど
〇適切な食事を与えない
〇下着など長期間ひどく不潔なままにする
〇極端に不潔な環境の中で生活をさせる

※放任と放置(ネグレクト)は異なります。愛情をもって危険などを排除した上で、かまい過ぎないようにするのが放任。愛情がない状態で、危険も顧みずほったらかしにするのが放置(ネグレクト)です。ネグレクトは紛れもなく虐待です。

▲ 子どもへの影響
〇栄養失調や脱水症
〇身体が適切に成長しない
〇好奇心や学習意欲の低下
〇愛着障害
〇情緒不安定
〇言語発達の遅れ
〇学力が定着しない
〇病気やケガ
〇事故に巻き込まれる

小1・小2で塾を選ぶなら「育てる」塾を選びましょう

 実は、「子どもをダメにする親」では、親の対応を8種類に分け、そのそれぞれについて両極端で子育てを行った場合について書いています。しかし、今回の内容から少し外れてしまいますので、上記の「親子の距離」の両極端だけ見ていただきました。そして、この例だけからでも汲み取っていただきたいのですが、極端な子育ては危険だということです。

 低学年の子どもの入塾について、ご相談に来る保護者の中には、「親との距離が近すぎる」方が、かなりの割合で含まれているように感じます。本題に入る前にこのようなことを長々とご説明させていただいたのは、もう一度、お子さんとの距離を客観的に測っていただきたかったからです。この距離感に気付かないまま「教える」塾に入れ、子どもをも追い込んでいけば、取り返しがつかなくなります。
 その部分を見つめなおした結果、距離が近すぎる場合は、「育てる」部分の地固めをしないと、教えれば教える程、悪い方向に行くような気がします。そして、「育てる」ことは基本的にご家庭が中心になって行いますが、「育てる」ことを主軸に置いたメジャーな教育メソッドを深堀りした私の記事「幼児教育について(メリットと注意点)」が参考になると思います。

 必ずしも、低学年からの入塾に問題があるのではありません。保護者が「育てる」ことを意識して、適切な「育てる」教育メソッドを選べば、良い方向に進むと思います。

 それでは、低学年の塾として適しているのはどのような塾でしょうか?

小学校低学年の塾通いに適した塾とは?

 前章では、小学校低学年までは「育てる」教育が必要だという話をしました。しかし、子どもの状況には個人差がありますし、ご家庭の教育方針も千差万別です。

 例えば、小学校に上がったはいいけれど、学校の勉強についていけなくなったとか、学校の勉強が簡単すぎて、勉強をなめてしまっているなどいろいろです。

 そこで、これから後は、状況に応じた塾の選択肢を幅広く、ご紹介します。

学校の授業についていくための塾

子どもの通う小学校を意識した地元塾

 前述のように、子どもが勉強を好きになる授業が小学校低学年で求められますが、もう既に勉強が嫌いだったり、学校の授業についていけない兆候が見えていた場合には、まずは学校の勉強が理解できて、自信を取り戻すことがとても重要です。学校の授業が分かれば、それが「成功体験」になり、自信が湧いてくるのです。学校の勉強が分からないのは「緊急事態」だと思ってください。つまり、ひっ迫した状況なので、本質的な解決を考える前に、目の前の危険な状況から抜け出す必要があるのです。一日も早い対策を講じましょう。

 そのために役立つのは、学校の勉強について熟知している地元の補習塾です。多くの場合、学校の近くにあり、学校の進度や先生の授業の癖までわかっているので、学校の勉強に追いつくための近道になります。

 しかも、小1・小2ならば、反復練習でどうにかなる内容です。それも、早目の対策をお勧めする理由です。小3になると算数の文章題や、国語の長文の読解などハードルはさらに高くなります。その前に、計算や漢字・語句といった反復練習で何とかなることで、子どもに自信をつけさせることが大切だと思います。本質的な解決ではありませんが、子どもがやる気になるには「成功体験」がとても大切な要素です。まずは、やる気にさせなければ、手遅れになります。

反復練習中心の授業の塾

 小1・小2は計算・漢字など反復練習系の授業が中心です。そして、これらはこれからの本質的な授業を理解するための、基礎訓練・ウォーミングアップに当たります。しかも、学校ではそれらが得意な生徒を「勉強のできる子」と評価する傾向にあります。つまり、計算・漢字・語彙など反復練習すれば何とかなることで「勉強のできる子」になれるのです。

 例えば、「公文式」などは反復練習系の最大手で、学校の勉強の手助けとなるでしょう。その指導手順はもう完成していると言っていもいいので、信用できます。反復練習に限って言えば、緊急事態の時には即効性があると思います。しかも、時間なども融通がきくのもありがたいですね。

 ただし、公文式は早く仕上げれば、早く帰ることが出来るシステムです。面倒くさいことは手っ取り早く仕上げようと、易きに流れる傾向があります。保護者の見守りが必要になります。

学校の勉強以外のプラスアルファに力を入れている塾

幼児教育のメジャーなメソッドで独自の教育方針を実施

詳しくは、私の記事「幼児教育について(メリットと注意点)」をご覧ください。
 ここでは、教育メソッドの例とそのキーワードを挙げるに留めておきます。

1)モンテッソーリ教育:
「自分で自立に向かって成長していこうとする力」「自発性」
2)シュタイナー教育:
「発達段階に合わせた教育」「健康なからだを育てる」「意思や創造力を育てる」
3)レッジョ・エミリア・アプローチ教育:
「子どもの個性や意思を尊重」「考える能力やコミュニケーション能力」
4)ピラミッドメソッド:
「安心できる環境」「自分で決断する力」「自己解決能力」
5)ドーマンメソッド:
「適切な刺激を与えることで可能性が伸びる」「算数や文字」「水泳」
6)ニキーチン教育:
「創造力」「自分で考える力」「自分で解決法を見つけ出す力」
7)石井式教育法:
「適切な言語教育」「豊かな言葉が豊かな心を育む」「漢字教育」
8)ヨコミネ式教育法:
「正義感や道徳観」「体力や柔軟性」「知識や生きる知恵を学ぶ力」
9)七田式教育法:
「右脳教育」「人間として心を豊かにする」「感性の教育」「リーダーシップ」

「地頭を良くする」ことが目的の塾

 「地頭を良くする」ことが目的の塾に関しては、そこに行けば「頭が良くなる」とか「即効性がある」などとは思わないほうがいいと思います。知育教育の延長線上にあり、「楽しく頭を使わせる」ことをやっている塾は、直接的に何かを教えて頭を良くするのではなく、これから後、教えたことを受け止める下地を作る場所、つまり「育てる」ことを実施していると考えた方がいいと思います。前述の教育メソッド例の中には、こちらの分類に入るメソッドもあります。

 「地頭を良くする」ことは、「いわゆる勉強」をさせることではないと、保護者が理解する必要があります。子どもが楽しくて集中できる状況が「頭を使わせる」ことにつながり、地頭を鍛えることになります。

 それは、傍目で見ていたら、例えば、友達と砂場で遊んでいるだけかもしれません。また、一人でぼんやりしているように見えるかもしれません。それでも、算数の足し算のプリントをする脳の活動の何倍も、脳はフル回転しているのです。

 話がややこしくなると困るので、「IQ」「地頭力」の違いについて、書いておきます。実は、「IQ」と「地頭力」は異なったものです。「地頭力」は数値化することができない「非認知スキル」、「IQ」は数値化できる「認知スキル」です。全く別種の能力です。

 「地頭力」に関しては、私の以前の記事「頭を良くする方法」で詳しく述べていますので参考にしてください。

 知育の効果として私が価値があると思うのは「深く考えることを経験できる」「脳の持久力を鍛えることができる」「考えることが面白いことだと気付かせる」などです。
 だからといって、知育教育でIQが高くなるのかと聞かれると、そのような研究結果は見当たりません。

 ニューヨーク大学のメタ分析によると、知育教育を含めた早期教育ではIQは上がらないと結論付けているようです。ただし、質の高い幼稚園(保育園)に入れるのはIQを上げる効果があるらしいです。この質が高い幼稚園(保育園)というのは誤解を与えそうですが、有名な「お受験」幼稚園ということではなく、友達を作って社会性を手に入れる環境ができている幼稚園(保育園)のことだそうです。平均して4ポイントIQが高いことが報告されています。

 私は、この結果を知って、「複雑なことを経験すればするほど脳は発達する」と、理解しました。つまり、皆さんもご存知のように、人間関係というのはどんなプリントよりも、知育玩具よりも複雑です。そして、あらゆる脳細胞を使っています。その上、自分の行動や言動がストレートに自分に跳ね返ってくるので、学習効果が高いのです。そう考えると、ニューヨーク大学の研究結果は納得できます。

 つまり、IQに限って言えば、幼児教育や早期教育で、そう簡単には上げることはできないことになります。

 では、「地頭力を鍛える」ことはできないのでしょうか。
 前述のように、私の記事の「頭を良くする方法」に詳しいのですが、一部を引用しますと、問題解決には次の3つのステップがあります。

1.関連の情報を収集する
2.分類・分析する
3.結果を人に伝える

 この中の2番目の「分類・分析する」力が地頭力なのです。そして、この部分に関しては鍛えることができます。
 私なりに地頭力を深堀りしてみたら、手前味噌ですが、中学入試の正しい受験勉強の中に「地頭力アップ」の練習が含まれていることに、気づきました。これも、何度も出てきた「頭を良くする方法」をご覧ください。

 しかし、まだ解決していませんね。先にも述べたように、小2までは「中学入試の勉強」のような、「教える」勉強はしないほうがいいのです。当然、受験勉強も意識し過ぎないほうがいいと思います。

 「では、何をしろというのか?」と叱られそうですが、私が低学年で取り入れていた手法は、「アクティブ・ラーニング」です。アクティブ・ラーニングとは、生徒自らによる能動的学習を目指す授業のことです。体験学習・調査学習・グループ討論・ディベートなどを指します。

 2020年度から施行されている新学習指導要領(※)でも、小学校低学年は「アクティブ・ラーニング」を取り入れた授業が勧められています。しかし、お叱りを覚悟でいいますと、小学校が急にアクティブ・ラーニングに移行できるとは思えません。やはり、先生方も意識を切り替えなければならず、特にお年を召した先生は、長い教師経験がかえって邪魔をして、今までの旧タイプの授業から抜け出せないような気がします。このことに関しては私自らの経験と反省です。
※私の記事の「『新学習指導要領』で変わる学校」を参考にしてください。

 この無責任とも言える独断は、私が塾の特別講座で「こどものための社会人講座」アクティブ・ラーニング手法で実施した時の経験から出てきたものです。私自身のことですので、お気を悪くされた方はご海容ください。

 この講座はアメリカのスタンフォード大学の「起業家育成講座」からヒントを得て、小中学生用にアレンジしたものです。しかし、いざ授業を計画し、小1から中3まで授業してみて、自分の固くなった脳を呪ったものです(苦笑)。
 しかし、上手く授業に取り入れることが出来たら、可能性のある手法だと実感しました。
 ※この「こどものための社会人講座」に関しては、そのうち記事にしようと思っています。

小学校低学年だけ特別な教材・方向性を打ち出している進学塾

 長い目で見ると、反復練習だけで優位を保つのは難しくなってきます。私が、小1・小2の授業を任されていたとき、カリキュラムから教材、特別講座まで企画・実施していました。その授業でも、アクティブ・ラーニングの手法を取り入れていました。賛否両論ありそうですが、具体的な授業の進行を書きます。

 小1の算数の最初の授業は「数える」という単元でした。例えば、「教室の机の数は?」「蛍光灯は何本かな?」「男の子は何人いるかな?」・・・などで、数字の持っている意味を理解させます。生徒の中には、計算はできるのに、その意味が分からないという子がけっこういます。

 進学塾の場合、熱心な保護者が多いので、小1の子どもたちでも、幼稚園時代にすでに足し算や引き算を習っている子がかなりいるのです。そのような場合、プリント学習などで計算のテクニックは身につけたけれど、その計算の持っている意味は理解していない、ということが起こりえるのです。
 ご参考になるかどうかわかりませんが、私の授業の一部をご覧いただきます。

具体的な授業例(アクティブ・ラーニング)

1)班を作り、課題を与え、その班の代表を決めます

 例えば、5~6人で班を作って、班ごとに教室の蛍光灯を数えさせる課題を与えます。「数え終わった後、班の代表の人に数えた蛍光灯の数を発表してもらいます。代表の人を班ごとに決めてください。」

 そうすると、「えっ!」「だれが、はっぴょうするの?」など、少しざわざわすると思います。とにかく、一人代表を決めさせます。

 このような場面でも先生が代表を決めてはいけません。ジャンケンで決めようが、立候補で決めようが、誰かになすりつけて決めようが、先生は口出しをしません。決まるまで待ちます。どうしても揉めて決まらない班があったら、「ジャンケンで決めたら?」など、決め方に関してのアドバイスは良しとしてください。

 決まったら、代表になった生徒を立たせて、みんなに顔見せをします。「では、この教室の蛍光灯の数を数えてください。」
 あえて、数えた後「ノートを取りましょう。」などの指示は出しません。それぞれの班がどのようにするのか先生はしっかりと見て、記録を取ってください。

2)課題を発展させ、あえてハードルを作ります

 「じゃあ次は隣の教室へ探検に行きます!」と、隣の教室をのぞいて蛍光灯の数を数えます。できれば、もう一つ隣の部屋へ移動してまた蛍光灯の数を数えます。数え終わったら、自分たちの教室に戻ります。

 「さて、3つの部屋の蛍光灯の数を数えましたね。では、皆さんにたずねます。3つの部屋の蛍光灯は全部で何本でしょう?答えられますか?」

 これは子どもたちにとっては意地悪な質問です。生徒たちは、3つの教室の蛍光灯の本数を、たぶん、記録していないのです。そうなると、「えーっ!もう忘れちゃった!」「もう一回数えなおしていい?」という子、「ノートに書いた方がいいと思います。」という意見。「まだ、こんな大きな数の足し算は習っていません!」という直訴。
 
 いろいろな意見が出そろったころ、「では、もう一回チャンスをあげます。班ごとに相談して、どのように数えて、覚えておくか決めてください。」「また蛍光灯を数えに行きますよ。」

 数えた本数を覚えていなかったり、メモしていなかったりするのを責めるのが目的ではありません。逆に、決して責めてはいけないのです。ここで、責めたら生徒は考えることをやめてしまい、先生の顔色を見ることに集中してしまうのです。先生の懐の深さが試されるときです。

3)班の話し合いで、いろいろな方法を考えさせます

 実は、大切なのは、これからです。それぞれの班はみんなで話し合い、蛍光灯を数えに教室を出るわけです。どの班が決めた方法も、どれが正しくどれが間違えということもありません。どうやったらこの問題に答えられるのだろうかと考えさせることが大切なのです。

 先生として避けたいのは、「これは、たし算で解けるね!」と言って、たし算の計算の授業に突入してしまうことです。それでは、子どもは能動的に考えていません。また、子どもが数えることの本当の意味が分からないまま、たし算というテクニックを教師から生徒に教える片道通行の授業になってしまうのです。アクティブ・ラーニングは能動的かつ双方向性でなくてはならないのです。

 ここからは、いろいろな可能性がありますが、分かりやすいように以下の3つの班の取り組み例で説明します。

A班:3つの教室の蛍光灯の数を一人の生徒がノートにメモを取るという方法で記録しています。
B班:絵の上手な生徒が3つの教室の蛍光灯を絵で描いています。
C班:3人の生徒が一人一教室を担当し、それぞれ何本だったか忘れないように口で言いながら教室移動をします。

 先生は、そのやり方の良し悪しについてコメントはしないでください。
 先生のすることは、他の授業中の生徒の邪魔にならにように、それぞれの班の行動を記録し、見守るだけです。

4)数え終わったら、各班の代表が発表します

 数え終わって、教室にみんなが戻ります。そこで、10分程度時間を与えて、班ごとに何本だったか、ファイナルアンサーを決めさせます。

 A班はどのようにノートにメモを取ったかによって、本数が数えられたり、数えられなかったりします。また、二桁の足し算の知識がある子がいた場合といなかった場合でも結果が違ってくるでしょう。先生は、班の中でどのような話をしているか記録してください。しかし、良し悪しの感想などはしないでください。進行上のアドバイスは適宜してください。当然、質問があった場合には応えます。

 B班の絵の担当はどのように絵を描いたのでしょうか。大人が考えると、天井に張り付いている蛍光灯を平面的に並べて書くことになりますが、子どもの発想力はスペシャルなので、どのような絵が出てくるかは予想できません。先生は、ここでも記録を忘れないでください。やはり、良し悪しの感想はしないでください。

 C班の3人に1教室ずつの蛍光灯の数を口で言わせ続けるという原始的な方法も、同様に聞き耳を立てて、記録してください。同様に、良し悪しの感想は述べないようにしましょう。


 以上のように、その10分の間にいろいろな意見が出ると思います。先生はぼんやりしていてはいけません。各班でどのような話がされているかをちゃんと把握し、記録してください。先生の役目は「ファシリテーター」なので、生徒の話し合いをゴールに導かなくてはならないのです。話し合いがもつれて、喧嘩していたり、蛍光灯の数を数え忘れている子がいたり、先生の力が必要な場面は数えきれないほどあります。

 「ファシリテーター」は繊細な感受性と、場を読む賢さが要求されます。実はアクティブ・ラーニングの難しいところは「ファシリテーター」の質かもしれないと思っています。

 10分たったら、A班から順に、班全員前に立たせ、最初に決めた代表者に発表させます。ここでも、問題は起こりがちです。例えば、人前に立つのが、急に怖くなって泣き出す子がいたり、10分で話がまとまらず、班内がざわざわしていたりするかもしれません。それでも、発表させることがとても大切です。先生は、発表ができるように導いてください。アクティブ・ラーニングの締めの部分です。

5)先生はファシリテーターに徹しましょう

 その発表の後、それぞれの班の考え方をたずねたり、もっといい方法がないかの意見を求めたり、やはり双方向性で最後の時間を使います。この時には、先生の意見を入れていいと思います。しかし、あくまでも生徒の意見は尊重した上でのアドバイスです。

 何か、アドバイスをする場合も、生徒に考える時間を与えた後にしましょう。先生の教えた内容をインプットするだけでは、身につかないのです。

 アクティブ・ラーニングでは生徒を導きすぎてはいけないのです。だからといって、ほったらかしにしておけば、無法地帯(笑)になってしまいます。先生は「ファシリテーター」として振舞うことを肝に銘じてください。

ファシリテーターとは?
〇生徒に発言を促す
〇話の流れをまとめ上げる
〇生徒の共通認識を確認する
〇話し合いを、定められたゴールに導く

最後に

 小1・小2はかなり微妙な学年であることが分かっていただけたと思います。私たち塾講師も非常に授業の予習に時間がかかる学年なのです。

 小1・小2は基本的には「教える塾」より「育てる塾」を選んでほしいと思います。それと同時に、ご家庭でも「育てる工夫」をしてください。プリントを渡して、丸付けて100点ならば褒めるという方法では、そのうち勉強嫌い、学力不振、点数至上主義になる可能性が大きいと思います。

 ご家族でいろいろなことを話しあったり自然の中で遊んだりするのは非常に脳の発達に良いと言われています。なぜなら、人とのコミュニケーション本物(自然)との出会いや観察は脳をフル回転させなくてはならない程「複雑さ」を持っています。また、それらは五感に訴える要素を含んでいます。感覚器は全て脳に複雑な刺激を与えてくれます。

 そして、塾選びはこの記事を参考にしてください。具体的な塾名はほぼ出していませんが、教育メソッドに関しては、お近くの教室をネットで検索してみてください。
 また、近くの補習塾は近所の方の意見が、間違いないかもしれません。
 最後に、進学塾の低学年クラスに関しては、上記は私の授業例ですが、塾により千差万別だと思います。近くの進学塾に直接行って、塾長先生や担当の先生に低学年の授業についてたずねてみるのがいいと思います。この記事で書いてあることと大きく外れたことをおっしゃっているようなら、候補から外した方が無難だと思います。

 少しでも、皆様の塾選びの参考になれば、嬉しいです。  (take_futa)


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