「新学習指導要領」で変わる学校

教育改革

「新学習指導要領」とは

 新学習指導要領はいつから始まるの?

 新しい学習指導要領は、小学校では2020年度、中学校では2021年度から全面実施、高等学校では2022年度の入学生から年次進行で実施されることになっています。
 下がその実施予定表です(政府広報オンラインより)

 

なぜ学習指導要領が改訂されるの?

 グローバル化や、スマートフォンの普及、人工知能(AI)の活用などによる技術革新が進んでいます。海外の専門家の中には、「今後10~20年程度で、半数近くの仕事が自動化される可能性が高い」などと述べる人もいます。進化した人工知能(AI)が様々な判断を行ったり、身近な物の働きがインターネット経由で最適化されたりする時代が到来し、社会や生活を大きく変えていくとの予測がされています。

 子供たちが学校で学ぶことは、社会と切り離されたものではありません。社会の変化を見据えて、子供たちがこれから生きていくために必要な資質・能力を踏まえて学習指導要領を改訂する必要があります。

新しい学習指導要領で育む資質・能力とは?

 新しい学習指導要領では、教育課程全体や各教科などの学びを通じて「何ができるようになるのか」という観点から、「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力、人間性」の3つの柱からなる「資質・能力」を総合的にバランスよく育んでいくことを目指しています。

新しい学習指導要領の下で学ぶ内容は?

 これからの子供たちは、グローバル化や情報化などによる社会の変化に対応し、また、自分たちを取り巻く様々な社会の課題に向き合い、解決しようとする力が必要です。
 そのような資質・能力を育むために、新たな学習指導要領では、小学校段階から中学校段階、高等学校段階を通じて、次のような教育の充実を図っています。

言語能力の育成
外国語教育
プログラミング教育
理数教育の充実
道徳教育
伝統や文化に関する教育
主権者教育
消費者教育

このほかにも、「体験活動」「起業に関する教育」「金融教育」「防災・安全教育」「国土に関する教育」などの充実が図られます。

「どのように学ぶか」も重視

 新しい学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」の視点からの授業改善を重要視しています。それでは、主体的・対話的で深い学びの視点とは、どのような視点なのでしょうか。

(1)「主体的な学び」の視点
 学ぶことに興味や関心を持ち、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげるような学びになっているかという視点。

(2)「対話的な学び」の視点
 子供同士が目標を共有し力を合わせて活動をしたり、自分の考えを広げ深めるような学びになっているかという視点。

(3)「深い学び」の視点
 様々な教科等で学んだ見方・考え方を相互に関連付け、自分なりに問題を見いだし解答を導きだせるような学びになっているかという視点。


 このように、子供たちが能動的(アクティブ)に学び続ける「アクティブ・ラーニング」の視点から、「何を学ぶか」だけでなく、「どのように学ぶか」を重視して、学校の授業を改善します。子供たちが学んだ一つ一つの知識がつながり、「わかった」「おもしろい」と思える授業、周りの人たちと共に考え、新しい発見や豊かな発想が生まれる授業などを工夫して、子供たちの資質・能力を育んでいきます。

(政府広報オンラインを参考にしました)

「大学入試改革」とは

何が変わるのでしょう?

「大学入試改革って何が変わるの?」と感じる方は少なくないと思います。

 最大の変更点は、大学入試センター試験の廃止と、大学入学共通テストが導入されることです。受験生の立場で言うと、試験が変わることで、対策が行いにくく、不安を抱えます。

 では、センター試験と共通テストはどのような違いがあるのでしょう。
 共通テストはセンター試験と比較して、基本的な各教科の出題範囲は変わりません。また配点や試験時間が、多少変更されている程度です。試験内容の変更点としては、実社会で目にする契約書などの文書を読み解く問題や、知識は要求されないがデーターを分析する能力を問う問題が増えています。また、教科の境界が曖昧になっている点は公立中高一貫校のテストと似ていますね。
※英語の試験に関しては、4技能の判定実施方法で座礁してしまったこともあり、今回は触れないことにします。

 大学入試改革は文科省の教育改革の中でも興味を持つ人が多く、目立つ部分なので、マスコミにも取り上げられますが、文科省が狙っているのは日本の教育全般の見直しなのです。つまり、大学入試改革は小学校から大学までの膨大な改革の氷山の一角にすぎないのです。

大学入試改革の目的とは?

 大きく変わる大学入試ですが、なぜ苦痛を伴いながらも改革が行われるのでしょうか。実は、大学入試改革が行われる背景には、社会的な変化があります。
 先を見通すことが難しくなった現代、10年後20年後には、社会が大きく変わっている可能性が高いのです。そんな目まぐるしく変わる現代社会に対応できる人材を育てるため、社会に対応した試験内容へと変わる必要があるのです。そこで大学入試改革が行われる目的を、社会的変化とともにご紹介します。

 改革前の大学入試センター試験では、「知識と技能」が必要とされていました。しかし改革に伴って、「知識と技能」だけでなく、「思考力・判断力・表現力」が必要となります。そして、これは時代の要請なのです。

 現在、日本は少子高齢化社会を迎え、変革期に入っています。人口の減少や労働力の低下、地方創生など課題はたくさんあり、それらへの対策が必要となります。このような状況下においては、知識の量だけでは解決できないのです。そこで自分たちで現状分析をもとにした問題提起を行い、それを解決する能力が求められているのです。
 また、ロボット・AIなどが、事務作業や技能が必要な作業などを奪い始めています。人間は、人間にしかできない能力を求められるのです。 

思考力を鍛えるアクティブラーニング

 アクティブラーニングとは、思考力や判断力、表現力を補うための能動的な授業です。一般的に行われる「教師が一方的に説明する授業」とは大きく異なり、グループディスカッションや、グループワークなどが中心になります。

 大学入学変革と同時並行的に、小学校や中学校、高校などで取り入れられるようになりました。アクティブラーニングでは、これまでに身に着けた知識を活用することで、「思考力・判断力・表現力」だけでなく「主体性・多様性・協働性」などを身につけることができます。つまり大学入学共通テストで求められる能力を身につけるができるのです。

「高大接続改革とは?」(文科省HPより)

 まとめとして、文科省のHPの「高大接続計画とは?」を紹介します。高大接続とは分かりやすく言うと、大学入試のことです。

 グローバル化の進展や人工知能技術をはじめとする技術革新などに伴い、社会構造も急速に、かつ大きく変革しており、予見の困難な時代の中で新たな価値を創造していく力を育てることが必要です。
 このためには、『学力の3要素』1.知識・技能、2.思考力・判断力・表現力、3.主体性を持って多様な人々と 協働して学ぶ態度)を育成・評価することが重要であり、「高等学校教育」と、「大学教育」、そして両者を接続する「大学入学者選抜」を一体的に改革し、それぞれの在り方を転換していく必要があります。 

「社会人基礎力」とは

「社会人基礎力」とは、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されており、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、経済産業省が2006年に提唱しました。
 
 「人生100年時代」や「第四次産業革命」の下で、2006年に発表した「社会人基礎力」はむしろその重要性を増しており、有効ですが、「人生100年時代」ならではの切り口・視点が必要となっていました。

 こうした状況を踏まえ、平成29年度に開催した「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」において、これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力を「人生100年時代の社会人基礎力」と新たに定義しました。

 社会人基礎力の3つの能力/12の能力要素を内容としつつ、能力を発揮するにあたって、自己を認識してリフレクション(振り返り)しながら、目的、学び、統合のバランスを図ることが、自らキャリアを切りひらいていく上で必要と位置づけられます。






※経済産業省のHPより

20年後に生き残るためには

 見ていただいたように、新学習指導要領と大学入試改革は明らかにリンクしていました。どちらが先ということではなく、文科省は未来に生き残れる国であるための教育を実践し始めたということだと思います。
 新学習指導要領では、「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力、人間性」を3つの柱としています。また、新大学入試改革では、『学力の3要素』1.知識・技能、2.思考力・判断力・表現力、3.主体性を持って多様な人々と 協働して学ぶ態度を育成・評価することが重要であると言っています。

 この「新学習指導要領」と「大学入試改革」の主軸のリンクには、元になっている「根っこ」があるのではないかといろいろ調べてみると、どうも最後に述べた経済産業省の「社会人基礎力」が怪しいことに気づきました。

 もう一度上の3つの能力(12の能力要素)を見てください。社会人になった時に必要な能力を詳細に論理的に教えてくれています。念のために時系列でも確認してみましょう。「社会人基礎力」を経済産業省が提唱したのが2006年。文部科学省が高大接続改革実行プラン(大学入試改革)を公表したのが2015年。新指導要領の改訂告示を公示したのは2016年です。これで、社会人基礎力の根っこ説は有望ですね。(take_futa)

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