頭を良くする方法

脳の発達

頭が良いとは?

 「頭が良くなる」でググると、「頭が良くなる方法」「頭が良くなる食べ物」「頭が良くなる音楽」「頭が良くなるアプリ」・・・と関連検索ワードがたくさん表示されます。世間の多くの人が「頭が良くなる」ことに興味があり、その具体的な方法を知りたがっていることがわかります。

 私も、以前は「頭が良くなるには・・・」などと、分かったようなことを塾の保護者会で言っていました。しかし、「青魚で頭が良くなる」とか「モーツァルトの音楽で頭が良くなる」などに出会い、科学的根拠はあるのだろうかと疑い始めてしまいました。

 そうなって頭の中で整理し始めると、実は科学的根拠以前に、「頭が良い」という言葉の定義自体、あまり深く考えたことがなかったことに気が付きました。

 そこで、「頭が良くなる 意味」などで、またググってしまいました。そうすると、実は世間でも「はっきりしていない言葉」のようです。しかし、はっきりしていない言葉であっても、多くの人が「頭が良くなる」ことを望んでいるのは確かなのです。

 そこで、「頭が良い」ということを分かりやすく説明してくれている「成功者の地頭力パズル」などで有名な梶谷通稔氏の文章を一部引用させていただきます。

 「頭が良い」とはどういうこと?のアンケート結果。

<小学生・中学生>

「勉強のできる人」という回答。では「勉強のできる人」ってどういう人?「試験の成績がいい人」となります。
 このことを「脳の働き」という観点から見ると、記憶力、理解力及びその応用という分野に関連しています。

<高校生>

 「勉強のできる人」に加え、「計算が速い人」とか「偏差値の高い人」といった大学受験を背景にした具体的な回答が増え、「物知り・博学な人」といった知識量も加わります。
 それでもまだ、脳の記憶力が主役を占めています。

<大学生>

 学校の成績や一般の知識量に関係するものに加え、「IQの高い人」「頭の回転が早い人」、「思考と創造性のある人」などです。ここまでくると、記憶力だけではなく、「地頭力」が云々され始めます。

<社会人>

 千差万別な回答なので全ては書ききれないので、内容を整理してみますと、「記憶力」、「計算力」、「理解力」、「コミュニケーション力」、「忍耐/継続力」、「判断/決断力」、「チャレンジ/実行力」、「発想/創造力」、「先見/洞察力」、「思考/問題解決力」、「統率/人間力」などにまとめられます。

頭の良さの定義

 実は「頭の良さ」と同様に「地頭」という言葉が近頃よく聞かれます。調べてみると「大学などでの教育で与えられたのでない、その人本来の頭のよさ。一般に知識の多寡でなく、論理的思考力やコミュニケーション能力などをいう。」とあります。
 これは、上記の年代別の「頭の良さ」の中では、社会人が使う「頭の良さ」にかなり近いと思います。

 はたして、「頭が良い ○○○」とググる人は、どういう「頭の良さ」をイメージして検索しているのでしょうか。

 私が定義する「頭の良さ」は、社会人のイメージする「頭の良さ」つまり「地頭力」に近いイメージです。では、ここからお話をしていこうと思います。

 小学生の定義では、「学校の勉強を頑張りましょう!」で話が終わってしまいますので。・・・(笑)

地頭力を鍛えるための方法

地頭力とは

 そもそも地頭力(じあたまりょく)という言葉は、ビジネスコンサルタント・細谷功氏の著作『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』(東洋経済新報社、2007年)がきっかけで普及しました

 細谷氏によると、地頭力とは「知識や情報を加工する能力」を意味し、問題解決のためになくてはならないものだそうです。

 地頭力という概念に関し、細谷氏は以下のように述べています。
 問題解決というのは大きく3つのステップから成り立ちます。

1.関連の情報を収集する
2.分類・分析する
3.結果を人に伝える

そして、2の分類・分析が「地頭力」なのです。
もう少し「地頭力」の具体的イメージを共有しましょう。

<地頭が悪い人の特徴>

・情報をうのみにする
・自我を押し通す
・全てを説明されないと理解できない
・想定外の事態に対処できない

<地頭がいい人の特徴>

・情報を吟味している
・相手の立場になって考えられる
・少ない説明で物事を理解できる
・想定外の事態に対処できる

どうですか、頭が良い人のイメージが具体的になったでしょうか。

地頭を鍛える方法(細谷氏の考える具体例)

地頭を鍛える方法1:フェルミ推定
フェルミ推定とは、詳しい数値が調べられないものを、手元の情報を元に推論する方法。
 中学受験でも「推理算」という算数の問題パターンに似ています。また、「割合」の問題でも「日本中にハムスターは何匹いる?」というフェルミ推定の例題につながるような問題は目にします。

地頭を鍛える方法2:ゼロ秒思考術
1つのテーマを30文字以内でまとめる。
1分以内に書き終える。
1日あたりA4用紙10枚分書く。
 中高一貫校の適性検査の授業では、「○○文字以内で説明しなさい。」と、秒数は決めないまでも、即答させることがあります。また、宿題として、「環境ホルモン」「地球温暖化」「LED」のような言葉を200字で説明しなさいという宿題は毎週出していました。

地頭を鍛える方法3:好奇心に従って行動する
 子どもの場合、基本的に好奇心に従って行動しています。(笑)

地頭を鍛える方法4:自分の価値観とは異なる本も読む
 中学受験用の国語の授業では基本的にかなり長い文章を授業中に読ませて問題を解かせ、解説します。また、宿題としても何種類かの異なる文章問題を解かせます。生徒にとっては否応なく、自分の価値観とは異なる本を読むことになります。

地頭を鍛える方法5:「ディベート思考」にチャレンジ
 英語会話コース(中学・高校)の上級者クラスでは、ディベートを英語で実施していました。さすがに、中学受験のクラスでは実施しませんでした。

地頭を鍛える方法6:会話で無意識に相手を否定するのをやめる
 過去に「子どものための社会人講座」という特別授業を実施したことがあります。その時に「ブレインストーミング」を実践しました。その中の約束事その1が「相手を否定せずに、肯定してから話を発展させる」でした。

地頭を鍛える方法7:数字を使って考え、話す
 算数の受験問題を解くときには、必ず数字を使って考えます。実は、算数から数学になると抽象度が上がるため、具体的な数字よりも変数などで考えることが多くなります。

地頭を鍛える方法8:仮説思考の習慣をつける
地頭を鍛えるには、仮説思考の習慣をつけましょう。仮説思考とは、限られた情報の中からとにかく仮説を立て、トライ&エラーの中で仮説を修正しながら答えに近づいていく方法のことです。

 算数の問題を解くときに「仮説思考」の対極にある「網羅思考」で、片っ端から、全てのパターンについて考えていたのでは、時間が足りなくなります。仮説思考は社会人が早く結論にたどり着くための思考法です。当然中学受験生も、テスト時間に間に合うように答えを出す必要があるので、当たり前のように「仮説思考」を取り入れて問題を解いています。

地頭を鍛える方法9:ゲーム理論を実践してみる
「ゲーム理論」とはどんな行動を選べば利益を最大化できるかという理論です。この理論のモデルの一つに「囚人のジレンマ」という、各人が自分にとって一番魅力的な選択肢を選んだ結果、協力した時よりも悪い結果を招いてしまう例が有名です。興味がある方はググってみてください。

 ゲーム理論的局面は日常生活で知らず知らずのうちに経験しています。例えば、Aさんの誕生パーティとBさんの誕生パーティが重なっていたとき、どちらのパーティに出るか出ないかの選択。
 Aさんのパーティだけに出るとBさんが気を悪くします。BさんだけだとAさんが気を悪くします。両方出なければ、二人とも何か事情があるのかと、気は悪くしませんが、次からパーティにはどちらからも呼ばれなくなります。では前半後半に分けて二人のパーティに出席すれば・・・。というようなジレンマのことです。例が、雑で申し訳ありませんが、子どもと言えどもそのようなジレンマは人間関係においてかなり頻繁に経験すると思います。
 受験でこのような問題にお目にかかるのは、早くても「共通テスト」でしょうか・・・。


地頭を鍛える方法10:一言でまとめてみる
 中学受験の国語の授業では、「要約しなさい」という作業を頻繁に入れています。また、近頃塾でも導入している「アクティブラーニング」を意識した授業では「要約する」ことは発表の時に必須です。

 の部分は、塾の受験科の授業や特別講座などで、細谷氏の「地頭を鍛える方法」をどの程度実践したことがあるかどうか、自分の経験で書いてみました。
 実際に、一つずつチェックしてみて驚きました。かなり、中学受験勉強と重なっている部分が多いのです。塾でやっていた授業は「地頭を鍛える」ことに役立っていたことを再発見できました。

塾での授業や、特別講座などでは、「地頭を鍛えること」が実践できていましたが、自宅ではできないものでしょうか?

地頭力の3つの要因

「『叱らない』しつけ」等で有名な教育評論家の親野智可等氏は、「楽しく勉強する」という意味の「楽勉(ラクベン)」を推奨しています。大事なことは「嫌がったり、無理だなと思ったら、そこまでにする」ということ。あくまで楽しんで、興味をもたないと、始まらないと言っています。

 「地頭がいい」ということには、3つの要因が関係していると言います。

「生まれつき」つまり持って生まれた資質。
「環境」。親や家庭、学校、友達など多くの人との関わり。
③ 子ども自身の「自由意志」。「俺は絶対にやるぞ!」というやる気スイッチ。

 この3つのうち、「生まれつき」と「自由意志」は、今回は基本的に親にはどうすることもできないことにしましょう。親にできるのは、2つ目の「環境」をよくすることです。親が「子どもを伸ばすため によい環境を整えよう!」と、意識しているのといないのとでは大きな違いが出てきます。

地頭を伸ばすための環境づくり

 地頭を伸ばすための環境づくりで、一番効果的なのは「本物体験」だと、親野智可等氏は言っています。身近なこととしては昆虫を捕まえて飼育したり、植物や野菜を育てたり、望遠鏡で金星や土星や木星や月を見てみたり…ということです。

 「本物(リアル)」は基本的に情報が失われていません。目の前の柵の竹の先にアキアカネがとまっていたら、そこに全情報があります。自然の持つ複雑さも全く失われていません。

 なぜ、竹の先にとまっているんだろう?なぜ、こんな赤色をしているんだろう?捕まえて観察すれば、目が小さな模様で出来ていることに気づきます。もっと近付けば・・・と、好奇心と疑問が溢れ出てきます。そこに全情報があるのですから、それを観察する人の観察力次第で、いくらでも情報を得ることができます

 脳を育てたければ、脳のいろいろな部位を総動員するようなことをすればいいと言われています。実は都会の均一化された風景や生活だったり、プリント学習や計算問題集などは脳の使う部位が限定されているのです。例えば、都会の小学校に通い、日々自宅でプリント学習や知育玩具で遊ぶだけの子は、知らず知らずのうちに、一部の脳は働き詰めなのに、他の脳の部位は休んでいるようなルーチンに組み込まれてしまっているのです。これでは、バランスの取れた育脳とは言えません。

 ニューヨーク大学の「早期教育」に関してのメタ分析の論文では、早期教育で明らかにIQを上げることに関係があったのは「良い友達が作れる環境のある幼稚園に入れること」だけだと結論付けています。少し極論のような気もしますが、私なりに解釈すると、多くの早期教育のノウハウよりも「友達とのソーシャルな関係を作る」方が、脳を育てるには良いということです。数値的にはIQで4ポイントも平均より高い数値を示したそうです。この結果を知って、本物の人間関係(友達)にまさる育脳はない、という感想を持ちました。これもまた「本物体験」の一種だと思います。

 森の中のクヌギの木にとまっているカブトムシに触ったり、友達と遊んだり、けんかをしたりする方が脳を広範囲に使っているのです。

 しかし、現実的にはいつもリアルが近くにあるとは限りません。しかも、リアルの中に急に放り出されても、子どもはそこから情報を得ることができない状況があるのです。それは情報を得るのに「下準備」が必要な場合です。

 例えば、クヌギの木にとまっているカブトムシが自分にかみつくような気がして、見ただけで逃げ出してしまえば、観察することも、情報を得ることもできません。しかし、昆虫図鑑で見たことがあったり、カブトムシが人気者であることを絵本で見たことがあれば、カブトムシを手に取ってみようと思うのではないでしょうか。
 そして、その「下準備」は今の例で挙げた図鑑のように、家庭でできることも多いと思います。
 リアルがいいのは、先ほどの説明でわかっていただけたと思います。そのとき「都会の生活やプリント学習」を悪者のように書きましたが、それだけでは「脳の使う部分が限定される」という意味です。つまり、プリント学習にしても、ある脳の部位はフル回転しているのです。それならば、いろいろなグッズを混ぜて「ハイブリッド育脳」をすれば、リアルに近づけるかもしれません。その上、リアルから情報を得る「下準備」にも適していると思います。では、その「ハイブリッド育脳」に使えそうなグッズをチェックしていきましょう。

「本物体験」を補う「楽勉グッズ」

図鑑:私も小5の時に図書室でたまたま読んだ天体図鑑に魅了されました。その後何年もの間、天文少年でした。親におねだりして天体望遠鏡を買ってもらい、本物の月・金星・土星・木星などを見た時の感動は今でも忘れません。

学習漫画:歴史を漫画にしたものなど、以前は本として世に出ていたものが、若者が受け入れやすい漫画に置き換えられています。入り口が広くなって良い傾向だと思います。漫画=低俗というのは、今となっては時代に合っていませんね。

地図・地図帳・地球儀:まさに疑似「本物」(?)ですね。地図帳を何時間でも見ていられるという人がときどきいます。その人は地図帳を開いてはいても、その向こうの本物の世界、土地を感じているのだと思います。そうなると、リアルよりも想像力が鍛えられますね。

国語辞典:国語辞典の中には「日本の今」が全て詰まっています。その中には自分がコミュニケーションに使っている言葉がほぼ100%入っているのです。良く考えるとすごい書物ですよね。

間違いさがし、なぞなぞ、迷路、パズル:これらは馬鹿にできません。今話題のワーキングメモリーを鍛えたり、言葉の柔軟性を磨いたり、論理的思考法の練習になったりと、結構実践的なグッズです。

読書:生きている間に読める本は、現在世に出ている本だけでもほんの一部にすぎません。人間には寿命という時間制限があります。
 本は自分の知らない世界に自分を連れて行ってくれます。本物ではありませんが、疑似体験をさせてくれます。だからこそ、何を読むかが大切になってきます。時間との戦いです。何を読むかによって地頭の鍛えられ方は違うのではないでしょうか。

インターネット:実は、上にあげたグッズの多くは、インターネットのウエブ上に、またはアプリとして存在しています。しかし、インターネットは「リアル」の対極にある「バーチャル」の代表選手ですから、混乱しますね。

 しかし、よく考えると、「ハリー・ポッター」という本は、リアルでしょうか。本という物はリアルですが、その物語(内容)はバーチャル(仮想)です。

 つまり、本を受け入れるならば、インターネットのコンテンツを除外するのは正しい選択ではないと思います。確かに、インターネット上の情報は「怪しげな情報」も混ざっているので、何を選ぶかというのはとても大切です。しかし、それも「本選び」に気を使うのと同じことと考えればいいのではないでしょうか。

最後に、いまだに気になって仕方ないこと

 私が最も尊敬する人の一人、養老孟司先生は、「どうすれば頭が良くなりますか?」の回答として、講演先などでよくこう答えているそうです。

「1日に10分でいいから、自然のものを見るといいですよ。」
 
 実はこの何でもないような一言にとても悩まされています。深い意味を持っているに違いないのですが、未だによくわかっていません。もしかすると、先ほどの本物に触れることと通じているのかもしれませんが・・・。


(take_futa)

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