「反抗期」の乗り越え方

育て方

はじめに

 先日、保護者会が終わった後、お母さん同士のおしゃべりを聞くとはなしに聞いていたら、「うちの子は、昔は何でも言うことを聞くいい子だったけど、近頃、反抗期で、ほとんど話してもくれない。」「うちの子は反抗期がなくって、助かってるけど、どこか変なんじゃないかって心配!」

 「反抗期」は自分も、わが子も通過したはずですが、喉元過ぎれば、になってしまっているのを感じました。

 「反抗期」の子どもをお持ちの方は、どのように扱えばいいのかお悩みだと思います。また、「反抗期が訪れない」子どもをお持ちの方は、自分の子どもはおかしいのではないかと、やはり悩んでいるのではないでしょうか。

 この記事では、「反抗期」の子どもをお持ちの方へ、対応策のヒントをお届けします。また、「反抗期」が訪れない子供をお持ちの方へは、心配する必要があるのか、ないのかをパターン別にお伝えします。

 しかし、「反抗期」は心理学的にも奥が深く、また、解明しきれていない部分があるようです。少し深堀をしていかないと、対応策を誤ってしまう可能性がありそうです。少し遠回りになりますが、対応策の前に原因から見ていきますので、お付き合いください。
 「子育ては誰でもみんな無免許運転」なのです。

「反抗期」は3回ある

 子どもには、2歳前後に表れる第一反抗期、いわゆる「イヤイヤ期」や、思春期に表れる第二反抗期があります。自我の芽生えやアイデンティティの確立で、どちらも子どもの発達段階で通る一過性のものです。それに加え、最近は中間反抗期とも言われている、小学校低学年の反抗にも悩まされる親御さんも増えてきているようです。

反抗期は親子関係の結び直し

 スクールカウンセラーとして活動されている、奈良女子大学教授の伊藤美奈子先生は、反抗期について、とても、分かりやすく説明されていたので一部引用させていただきます。

 反抗期を、親離れ・子離れをするための「儀式」だとすると、この「儀式がない」親子関係は、「自立が遅れている」状態だと言えます。
 しかし、反抗期を、親子関係の「結び直し」作業の時期だと考えると、反抗期がなくても不自然ではありませんね。

 それでは、親子関係の「結び直し」とはどういうことでしょう?
 子どもが小さい時期の親子関係は、保護者が上で子どもが下の「タテ」の関係です。しかし、子どもが成熟するにつれて、この関係性は次第に「お互いが自立し、同等である」という「ヨコ」の関係に結び直されていきます。

 ただし、思春期の子どもは、体は大きくても、社会的にも経済的にもまだ自立できていません。保護者は相変わらず上にいて、ヨコの関係にはなれません。そこで子どもは、暴言や無視などで、なんとか「親を引きずり下ろしてやろう!」ともがくのです。これがいわゆる「反抗期」です。

 さて、反抗期が始まると、保護者の多くは、試行錯誤しながら子どもの気持ちに歩み寄る努力をします。子どもも、いずれ「親も一人の人間なんだ」と気付きます。こうして、親子関係が「タテからヨコ」に、ある程度結び直されたところで反抗期は終わりを迎えます。

「反抗期」がなくても心配ないパターン

 こうした、「親子関係の結び直し作業の時期」が反抗期だとすると、「反抗期がなくても心配がない」のは、どのようなパターンでしょう。

1)子どもが小さいころから、保護者と子どもが「対等な人間」として付き合ってきたパターンです。ただし、日本では、それほど多くないと思います。

2)上の兄弟の反抗期と保護者の姿を見て、「親を悲しませたくない。親とよい関係を築こう」と、子どもから「ヨコ」の関係をつくるパターンです。

3)「親が病気で、早く大人になって親を守りたい。」と思っていたなど、「タテ」の親子関係がもともと強くないパターンです。

 反抗期がなくても心配がないパターンの多くは、思春期以前の段階で、親子関係がタテからヨコに結び直され、子どもが保護者の位置まで「成長している」ことがポイントです。

「反抗期」がないことが心配なパターン

1)タテの関係がずっと続く
 親子のタテの関係が、思春期が終わっても、続いているパターンです。
 このように保護者の保護や支配が強すぎると、子どもはヨコの関係を築く機会を失います。

(2)よくない意味での「友達親子」
 保護者が子どものところまで「下りてきてしまう」パターンです。
 このパターンは、一見「友達親子」のようですが、実はただの「子ども同士」でしかありません。

 「下りてきてしまう」保護者は、むしろ子どもより下になる可能性があります。これでは、子どもは「暴君」になってしまうかもしれません。

 よい意味での「友達親子」は、子どもが反抗期を卒業して、精神的・社会的・経済的にある程度自立したあと、親子が大人同士の友達のような関係になることがあります。これは、とても健全な「友達親子」といえるでしょう。

反抗的態度を作る原因

 思春期の第2反抗期の子どもたちは、急激な体の成長や変化に心の成長が追いついてくれません
・身長は父親を追い越したが、腕力ではかなわない。
・自分は大人なのか、それともまだ子どもなのか。
・親は都合に合わせて大人として扱ったり、子ども扱いしたりを使い分ける。
一概にはいえませんが、反抗期に見せる反発は、単一的な理由によるものではありません。
不安・ストレス・不満・矛盾・自己主張・・・などが、反抗的態度となってあらわれてきます。

 全ての子どもが反抗期を迎えるわけではないことは、先ほど述べました。
気にしなくてもいい場合と、気をつけた方がいい場合を見極めましょう。

反抗期になるとどうなるのでしょうか?

 子どもの反抗期を経験したことのない保護者は、「リアルな反抗期」に出会うと、ショックを受けて、冷静に対応できないかもしれません。そのために、男女に分けて具体例を書いておきます。

<男子の場合>
・暴力的な言動
・物を投げたり壊したりする
・いろいろな物を叩くなど、大きな音を出す
・母親に暴言を吐く

<女子の場合>
・男性的言葉遣い
・母親に暴言を吐く
・部屋に閉じこもる

<共通の特徴>
・挨拶や返事をしない
・化粧や髪を染めるなど服装が乱れる
・喫煙などの不良行為を試す

<弱者に優しい>
 反抗期の子どもが見せるもう一つの特徴といえます。
たとえば、「そろそろお風呂入ったら」という一言。
母親が言うと、返って来るのは「うるせえんだよ!」
ところがおばあちゃんが言えば「わかってるよ」とマイルドな返事になります。

相手によって使い分けることができるということは、ただ感情に流されているというわけではない、ということです。つまり、反抗的態度は自己主張の一種と考えるべきでしょう。

大人が気をつけたい、反抗期の子どもとの接し方

子どもにやってしまいがちなNG例

 反抗期の子どもたちは感受性が豊かです。腫れ物にさわるような思いで接する必要こそありませんが、導火線に火を点けるもととなるような言動は避けるべきで、注意が必要です。以下はNG!

・叩く
・自身の若いときや、よその子などと比較する
・くどくどと説教する
・干渉し過ぎる
・携帯やスマホ、ゲーム機を取り上げる
・頻繁な夫婦喧嘩

上手に接するコツ

1)家族愛を嫌みなく自然に感じさせる環境を作っておく
2)疲れた体を横たえ、安心して羽を休められる場所はちゃんとここにあるんだよと、気持ちや言葉で伝えてあげる
3)小さなことでもよいので時々は褒めて、感謝の言葉を伝える
4)適度な距離感を保つことで子どもの情緒は安定します
5)直接の会話になかなか応じてもらえないというようなら、LINEやメールを使うという手段も

「反抗期」を経験した保護者の具体例

成功した例

●「おはよう」などのあいさつは必ずして、後は子どもから話し掛けてきたときに答えるようにした
LINEを使って軽い感じで問い掛けたり、スタンプを送ったりした
●娘が家にいて互いにストレスを感じるときは、わざと、私がウオーキングなどで家を空けた
声掛けは短く何回も繰り返し、冷静に淡々と対応した
●娘の反抗がひどくなったとき「あなたは親の宝物」と伝えて子どもを信じ、時がたつのを待った
伝えたい事は言葉で伝えるようにしていた。息子にはたたかれたが、たたき返さなかった
●子どもの言い分が多少間違っていても「そうなんだ」と否定も肯定もせず、聞き流す
●子どもの機嫌がいい日を見計らって、一緒にドライブに行き、車中では何げない話をしたり、好きな物を食べさせたり、バドミントンをしたりした
●学校や部活から帰って来た後、1人でクールダウンする時間と空間が必要らしいと気づき、なるべくそっとしておいた
●反抗されたとき「何か分からないけど心がモヤモヤするんやろ?」と子どもの気持ちに寄り添い頭ごなしに叱らないように気を付けた
怒るラインを少し高めに設定した

失敗した例

●子どもが無言を貫いていたので、問い詰めたり、「無視するな」と注意したりした
根掘り葉掘り聞いたら、かえって話してくれなくなった
プレッシャーをかけ「帰ってこなくていい」と言ったら、本当に帰ってこなくなりました
●子どもの口答えにいちいち反論して、火に油を注ぐような失敗を繰り返していた
頭ごなしに口うるさく言い、言い争いになって収拾がつかなくなってしまった
●良かれと思ってあれこれアドバイスしたら、上から目線と言われた

最後に

 「反抗期」の子どもと接するときは、保護者の冷静な対応が大切だということが、お分かりいただけたと思います。しかし、私も含めて「わが子」が生意気なことを言っていたら、カーッとなって当然ですよね。
 しかし、ここまで読んで頂いた方は「反抗期」の意味がお分かりいただけたと思います。子どもたちも、好きで反抗しているわけではないのです。多くの葛藤があり、そこから抜け出すためにもがいているのです。
 とにかく、力で抑え込むようなことをしては、「反抗期」が出現している本当の意味を叩き潰すことになります。「うまく、親子の結び直し」をしてください。
 「子育ては誰でもみんな無免許運転」なのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました